会社を辞めようか悩んでいるとき、一番重かったのは将来に対する不安でした。
家族に迷惑をかけないか。
次の仕事をどうするのか。
辞めたあとに生活していけるのか。
そして、そもそも自分は何のために働いているのか。
会社という組織の中で、自分はどんな役割を果たしてきたのか。
会社を辞めたら、自分の人生の何が変わるのか。
退職を考える中で、そうしたことと一つずつ向き合っていくことになりました。
退職は、単に会社を辞める手続きではありません。
これまでの働き方や、これからの生き方を見つめ直す、大きな転機でもあります。
私が退職を考えることになった背景
私の場合は、事業縮小にともなう人員整理があり、同時に早期退職制度の募集もありました。
その中で、自分の前には大きく2つの選択肢がありました。
ひとつは、別の事業所へ単身赴任して、そのまま会社員を続けること。
もうひとつは、早期退職制度に応募し、会社を退職することです。
会社側からは、会社に残ってほしいという要望もありました。
長く働いてきた会社です。
自分なりに役割もありましたし、必要としてもらえること自体はありがたいことでもありました。
けれど、その選択をした場合、私には大きな問題がありました。
それは、単身赴任をしなければならないということです。
単身赴任を選べなかった理由
単身赴任そのものが悪いわけではありません。
家族の状況や仕事の事情によっては、単身赴任を選ぶ人もいると思います。
特に50代は年功序列で収入が最も高くなる時期です。
石に齧り付いてでも会社に残るべきと助言をしてくれた同僚もいました。
ただ、私の場合は、簡単に選べる状況ではありませんでした。
理由は大きく2つありました。
ひとつは、親の高齢化による介護のことです。
父親は、自立して生活できるとは言いきれない状況にあります。
母親は元気ではありますが、年齢とともに体力も弱ってきています。
父親の介護すべてを母親に任せきることはできません。
また、妻にもすでに負担をかけている状態でした。
もうひとつは、育児のことです。
末の娘は小学生ですが、学校へ通いづらい状況がありました。
不登校とまでは言えないかもしれません。
けれど、朝になると通学しづらくなり、遅刻したり、そのまま学校を休んだりする日もありました。
ここにも妻の負担がありました。
そんな状況の中で、自分だけが家を離れて単身赴任することに、どうしても踏み切れませんでした。
会社に残ることは、収入面では間違いなく安心できる選択だったかもしれません。
けれど、家族のそばにいることの意味を考えると、収入だけでは決められませんでした。
そこで私は、早期退職を選んだ場合のことを本気で考え始めました。
早期退職を選んだ場合に考えたこと
早期退職を選ぶと決めたからといって、不安がなくなったわけではありません。
むしろ、会社に残る選択肢を手放すことになるので、不安はさらに現実的になりました。
1. お金の不安
まず考えたのは、お金のことです。
退職金はある。
失業給付もある。
けれど、まだ54歳です。
それだけでこの先ずっと生活できるわけではありません。
老後資金は貯める途上であり、巣立っていない子供も、ローンの返済もあります。
家族の生活を守るためには、次の収入をどう作るかを考える必要がありました。
2. 次の仕事の不安
早期退職を選ぶうえで、もうひとつ大きかったのが、次の仕事をどうするかということでした。
若い頃であれば、「次を探せばいい」と単純に考えられたかもしれません。
けれど、50代になってからの転職は、そんな簡単ではないと感じていました。
これまでの経験がある一方で、年齢の壁もあります。
希望する条件で仕事が見つかるのか。
収入は大きく下がるのではないか。
そもそも、自分を必要としてくれる会社はあるのか。
そう考え始めると、不安はどんどん大きくなりました。
ただ、私の中にはもうひとつ別の道筋もありました。
それは、次もまた同じように会社員として働くことが、答えなのかということです。
もちろん、家族の生活を守るためには、収入を作らなければいけません。
その現実から目をそらすことはできません。
けれど、これまでと同じように会社に所属し、同じような働き方を続けることが、自分にとって本当にいいのか。
そこにも迷いがありました。
退職を考えるということは、単に次の勤務先を探すことだけではありません。
自分はこれから、どんな働き方をしたいのか。
家族を守りながら、自分の人生をどう立て直していくのか。
その問いと向き合うことでもありました。
だから私は、再就職だけに決め打ちするのではなく、いくつかの選択肢を考えることにしました。
会社員として再就職する道。
個人で仕事を作る道。
これまでの経験を活かしながら、新しいスキルを学び直す道。
どれが正解かは、まだわかりません。
それでも、退職すると決めたとき、次の収入をどう作るかを考えることは避けて通れません。
職種や働き方を最初から決めつけるのではなく、会社員として働く道も、個人で仕事を作る道も含めて、広く考える必要がある。
それは、この大きな転機に自分を見つめ直すことと同じくらい大切なことだと感じました。
3. 自分の働き方を変えたい気持ち
30年同じ会社に勤め、会社員はもう十分やったという思いが自分にはありました。
今までの人生で、半分以上の年月を捧げてきたものです。
先輩から仕事を一から教えていただき、仕事のやり方を覚え、役割を果たす。
時には仲間と協調しながら、いろいろな課題を解決していく。
その中で苦しいことも、失敗もありました。
やりがいを感じることも、成功体験もありました。
私の会社員人生に後悔はありません。
でも、会社員生活では不足しているものもありました。
それは一言でいうなら「自由」です。
決まった時間に出社して、決まった服を着て、決まった職務をこなしていく。
上司から言われたことに従う。
会社から言われたことに従う。
それは悪いことではありません。
会社という組織を運営するうえで必要なことですし、その対価として安定した収入を受け取ることができます。
若い頃は、「本当にこれでいいのだろうか」「自分は何のために働くのか」という問いが、自分の中にありました。
だけど、歳を重ねていく中で、そんな問いはいつしか薄れていきました。
毎日の仕事をこなし、家族を守り、生活を続けていく。
その中で、深く考えることを少しずつ後回しにしていたのかもしれません。
でも、今立ち止まって、あらためて自分を見つめ直したとき、50代からでも、もう一度働き方を選び直していいのではないかと思いました。
会社の中で役割を果たすだけではなく、これから出会う誰かに、自分はどんな価値を届けられるのか。
そう考えると、不安だけでなく、少しワクワクする気持ちも出てきました。
会社員として生きてきた時間は、決して無駄ではありません。
その経験を土台にして、これからの人生をどう働き、どう暮らすのか。
退職は、その問いに向き合うための大きなきっかけになりました。
退職は「逃げ」ではなく、優先順位を決めることだった
退職という言葉には、どこかネガティブな印象があります。
会社を辞めることは、負けを認めること。
途中で逃げ出すこと。
そんなふうに見られるのではないかと、私自身も少し気にしていました。
でも、退職について考え続ける中で、少しずつ見方が変わっていきました。
退職は、ただ会社から離れることではありません。
自分にとって何を大切にするのかを、あらためて決めることでもあります。
私の場合、会社に残れば収入面では安心できたかもしれません。
けれど、そのためには単身赴任を受け入れる必要がありました。
親の介護のこと。
子どもの学校生活のこと。
妻にこれ以上負担をかけたくないという気持ち。
そして、自分自身のこれからの働き方を見直したいという思い。
そうしたものを一つずつ並べて考えたとき、私にとって退職は「逃げ」ではありませんでした。
何を守り、何を変えるのか。
その優先順位を決めるための選択でした。
一人ひとりの人生には、それぞれ違う地図があります。
目的地も、通る道も、歩く速さも違っていい。
退職は、その地図の中にあるひとつの岐路なのだと思います。
大事なのは、誰かにどう見られるかではなく、自分と家族にとって何を大切にしたいのか。
そこから目をそらさずに考えることでした。
まとめ:退職してよかったかは、まだ答えを出さなくていい
退職して一ヶ月が経ち、こうしてブログも始めました。
ただ、次の収入が具体的に決まっているわけではありません。
それでも、不思議と心は落ち着いています。
もちろん、不安がないわけではありません。
これから収入をどう作るのか。
家族の生活をどう守るのか。
考えなければいけないことは、まだたくさんあります。
それでも、退職してからの日々の中で、新しい発見や学びがありました。
ブログを始めたこと。
AIを使いながら文章を書いていること。
これからの働き方について、もう一度考え始めたこと。
そうした一つひとつの経験を通して、まだ自分も成長していけるんだと感じています。
退職という選択は、もしかしたら茨の道かもしれません。
すぐに「退職してよかった」と言い切れるほど、簡単な道ではありません。
でも、今すぐ答えを出さなくてもいいのだと思います。
選んだ道を、これからどう育てていくか。
そのことの方が、今の私には大切です。
だから私は、この選択を信じて、少しずつ前に進んでいきたいと思います。

